眼の中に人工のレンズを入れることはファキックIOLという治療方法で実現されています。ファキックIOLは人工レンズを角膜と虹彩の間に挿入し、虹彩の組織に固定します。
老人になると水晶体が濁る白内障になることがあります。現在行われている一般的な白内障の手術は、水晶体を包んでいる後ろの膜を残して水晶体を摘出し、そこに人工レンズを入れて固定します。
昔の白内障の手術では混濁した水晶体を摘出した後、角膜と虹彩の間に人工レンズを取り付けました。ファキックIOLは水晶体を摘出しませんが、他は白内障と同じような方法で行います。白内障手術では凸レンズを入れますが、近視に対するファキックIOLでは凹レンズを入れます。
ファキックIOLは非常に強い近視を矯正できますが、いくつかの問題点があります。
①人工レンズにたんぱく質や脂肪組織の沈着が起こることがある。
②異物に対して過敏な体質の場合、人工レンズでアレルギー反応が起こることがある。
③夜間、光を見たとき人工レンズの反射によってギラギラしたまぶしい感じが現れることがある。
④人工レンズで眼の中にある房水の流れを阻害するため、高眼圧症、緑内障になることがある。
⑤感染によって眼内炎を起こすことがあり、最悪の場合は視力を失う。
ファキックIOLにはこうした問題が解決されていないため、一般的にはあまり行われていません。